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「よしっ剪定おわり!」
軽く滲んだ額の汗を袖で拭い
登っていた最後の木より
シュタッ と
華麗に飛び降りるわたし。
これで全部の木に登ったかな
よしよし
――改めて
庭先に並ぶ全ての木を眺める。
枝木や余分な葉を切り落としたから、その地面はかなり…アレだけど
うん綺麗になりましたね!
地面はアレですけど!
――最近は 門番として働くより
庭師 として
花を管理する才能に長けてきたようなそんな気がするなぁ。
散らばった枝木と葉っぱを
手に持った箒を
さっさと地面に滑らせながら
わたしはそんなことを思う。
“花に顔はないけれど
その表情には
千差万別のものがあるものね”
ってわたしが手入れした庭を見た咲夜さんが言ってました。
わたしじゃないですよ!
ん~…でも
そう言われると一つ一つの花や木にも表情なんてあるのかな
例えば よく手入れが行き届いている花はにこにこしてて
全然 手入れも水やりもしない花は寂しそうにしてるとか?
芽吹いたばかりの草木は無邪気そうな表情をみせるのかとか
今にも枯れそうに萎れた花は…どんな表情を見せるのかな
“人も花も妖怪も
その蕾を開くまでは如何な表情を構築するかは不可視なのよ”
…パチュリー様は
なんだかこんな小難しいことを言ってた気がする
なるほど、わかりません。
そして その直後に
花壇に生えていた花を数本ぶちぶち もぎ取っていった…
実験だからってひどいですぅ…
“いずれ散りゆく か弱き命を愛でるなんて 百万の命を統べる
ワタシには到底出来ぬ所業ね…
フッフ…”
…お嬢様に至っては カリスマ全開の笑みでそう言う始末です。
でもわたし知ってますよ~
こっそり夜の内に花壇の隅にトマトの種が埋めていたのを
美鈴見てましたよ~
以外と 可愛い一面があるお嬢様
ふふ お好きですもんねトマト
ただお嬢様
埋め方が解らなかったのでしょうか…地中深くに埋めすぎて
化石発掘みたいに
なってましたよ ええ。
美鈴は掘り返して その極少の種を見つけるの大変でしたよ!
いやどうも…お嬢様の箱入り具合には驚かされるばかりです。
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