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弱き者はただ口を閉ざすのみ。
重たい空気の中、俺はただひたすらお許しがでるのを待つ。
俯いていて見えないが、綾香の視線が突き刺さるのが分かる。
でも気持ち良くもなんともないから、俺はMではないらしい。
ちょっと安心です。
永遠にも似た沈黙が続く
しばらくして、綾香はまあいっか、とあっさりいつもの顔に戻った。
そして、何か思い出したのか目を大きく見開く。
「あっ、そうそう。そういえばね、今日から転校生が来るらしいわよ。女の子で、しかも二年生だって」
悪戯っぽい笑みで俺をうかがう綾香。
対して俺は何て答えたらいいのか分からずニヤニヤした綾香を見つめ返すだけ。
この女、俺が飛び上がって喜ぶとでも思ってんのか?
そりゃあ、転校生っていったらそれだけで魅力的な響きだし、もしかしたら俺と……なんて甘い展開を想像するやつもいるかもしれない。
けれど、現実はそんなに甘くないし、残念ながら俺はそこまで異性に飢えていない。
恋だってしたいとはぼんやり思うけれど、自分から積極的に仕掛けようとは思わない。
自然な流れで誰かと付き合うようになれることを期待していた。
相変わらず見据えてくる綾香に、俺は空気を読まずに冷めた発言をする。
「転校生ねえ……まあいいんじゃないか?」
綾香は理解出来ないというように顔をしかめた。
「うわぁー……もしかして夏樹ってゲイ?」
「黙れ近親相姦魔。俺はノーマルだ」
弟と禁忌を犯そうとした女に言われると余計に腹が立つ。
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