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ついこの間まで一番下の学年だったのに、気が付けば俺も先輩なんだよな。
時間の流れをしみじみと感じつつ、俺は一階廊下を歩いて自分の教室を目指す。
一階から三階までそれぞれにクラス用の教室が八つずつあり、階の数字が学年と一致している。
俺は『1―C』のプレートが掛けられた教室に着くと、なんの迷いもなくドアを開けた。
「おはよう…………ん?」
朝の挨拶を誰にともなくとばした俺だったが、返事はなく沈黙が流れた。
自分に集まる困惑の視線。良く見ると、教室内には四十人近く生徒がいるのに誰一人として知り合いがいない。
不測の事態に俺は疑問を覚えた。
──なんで?
右も左も知らないやつだらけだ。
ドア付近にいた女子は小さい悲鳴を上げて後ずさり、真正面にいるチャラそうな男は俺を威嚇するように睨み付けてくる。
その他大勢はその様子を他人事みたいに傍観していた。
明らかに浮いてる。
なんでかは分からないけれど、俺がやらかしたような空気がその場の生徒たちから漂っていた。
いや、俺がなにをした?
わけが分からず、とりあえず状況を整理しようま俺はヒソヒソと俺をチラ見しながら話す女子二人に声を掛けた。
「あのさ、ちょっと質問なんだけど、ここって1―Cの教室で合ってるよね?」
「は、はい、たぶん……」
消え入りそうな声で自信なさそうに答えたのは、さっき俺から距離をとった女子生徒だった。
どうやら目的の教室で合ってるらしい。
じゃあ、なんで?
俺は顎に手を当て話を整理しようとしたが、四方から突き刺さる視線がますます厳しくなるのに耐えられなくなり、とりあえず教室を出た。
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