7948人が本棚に入れています
本棚に追加
/463ページ
見渡す限りに広がる真っ青な海に誰からともなく感嘆の声がもれた。
太陽の光が水面で跳ねてキラキラと夏を彩る。
夏休み八日目。
始まって一週間が経過した頃。
俺たち──いつもの六人は名も知らない海に来ていた。
周りには俺たち以外に誰にもいない。
まるで俺たちのためにだけ用意されたようなプライベートビーチ。
というか、正真正銘のプライベートビーチ。
さて、声すら出ない圧倒的な大自然を前につい話が飛躍しすぎた。
まずは心を落ち着けてここに来るまでの経緯をささっと解説したいと思う。
時は夏休み初日までさかのぼる。
橘もとい樹里と付き合い始め、俺たちカップルが最初にむかえたイベントは、我らがツンデレちゃんこと沙耶とのパフェデートだった。
約束したのは俺のほうなんだから当然果たすべき義務なのだが、しかし樹里という名の彼女ができてしまったため、沙耶と学校外で、しかも二人きりで会うというのはどうしても気が引けた。
そこで俺は苦悩の末、樹里を交えた三人によるパフェをつっつく会に直前で変更したわけだ。
要はパフェを奢ればいいわけだし、樹里が一緒なら沙耶も喜んでくれるだろうと俺は分析していた。
しかし、沙耶は当日になって樹里が一緒にいることに気が付くなり最俺の胸ぐらに掴みかかってきて明らかにお怒りだった。
盤石な状態で臨んだ俺からしたら驚かざるをえなかった。
が、事情──樹里と付き合い始めたことを話すと態度が一変。
表情を曇らせ、かと思えば次の瞬間には大袈裟なほどに俺たちを祝福してくれた。
態度があまりにコロコロと変わるので喜んでいいのか戸惑ってしまったが、これが友人への初めての報告ということもあってそんな違和感はすぐに消え、沙耶の気持ちをありがたく受け取ることにした。
その後は何事もなかったように三人で談笑しながら甘味を食し、その日を無事に終了した。
成功のお礼として偉そうにも樹里を抱きしめてあげると、逆にきつく抱きつかれ俺は危うく気絶するところだった。
そんな情けない俺を見て樹里大爆笑。
付き合い初めてより一層立場の弱くなる今日この頃だった。
最初のコメントを投稿しよう!