樹里の秘密(後)

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 正午をとっくに過ぎたというのに、俺と結菜はいまだに噴水の縁に腰掛けていた。  会話がなくなってから、もうどれくらい経つだろう。  それすらもわからない。ただ静かな噴水の音だけが流れる。 「ふぅ……そういうことか」  気配がする。  わずかに顔を上げて見ると、結菜はまっすぐ前を見据えていた。  無表情で、そこにある感情は俺にはわからない。 「まさか、お互いに気づかないまま付き合っていたなんてね。いや、あの様子からして、樹里のほうはわかっていたのかな。ただ……どう反応していいのか、僕にはわからない」  小学校を六年間共に過ごした結菜は、全てを知っている。  俺が樹里にしたことも。それからのことも。  だからこそ、言葉にできないのだと俺は思う。  好意を寄せ合っていたとしても、それはある意味では偽りであり。  根底にある問題の解決にはなっていない。  ややあって、でも、と結菜は言う。 「気づかなかったのは僕も同じだ。何の別れもなく、突然いなくなってしまった樹里と、まさかこんな所で会えるなんて。これっぽっちも思っていなかったから。だから、というわけではないけれど、僕は夏樹を責めたりはしない。仕方のないことだと思う」  仕方のないこと。  果たして本当にそうなのか?  簡単に割りきっていい問題なのか?  放心状態で何も考えられない。  俺にはわからない。
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