7948人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は結菜と向き合う。
噴水に腰掛ける彼女はまっすぐ俺の視線を受けとめ、真剣に心配してくれているのがわかる。
…………ははっ。
頼れる人がいる俺は本当に幸せなやつだ。
見栄張って余計な心配を掛けるくらいなら、思いの丈をこの親友殿に聞いてもらうことにしよう。
堪えきれずに泣き出して、これ以上ない恥をさらす前に。
「はあ……結菜は鈍いなー」
微妙に会話に成らないような返答に、結菜は首を傾げる。
「鈍い? 僕が?」
「そうだよ。だって、俺を見ればわかるだろ? もうボロボロ。大好きな女の子を失って、途方に暮れてるところだよ」
白状する。
認めたくないけれど、俺は未練がましい男みたいだ。
樹里に謝って、それで関係を終わらせようとしていたにもかかわらず、やっぱり駄目だった。
だって樹里のことが好きなんだから。
どうしようもなく。
彼女のいない日々なんて今さら受け入れられるわけがない。
でも、それと同時に。
これから先、なにをどうしていいのか俺にはわからない。
恋人という関係を続けていいのか。
樹里のそばにいてもいいのか。
そもそも、樹里に許してもらう権利があるのか。
真っ暗闇に一人ポツンと立ち尽くしている気持ちだ。
どこにも進めない。
不安で仕方がない。
最初のコメントを投稿しよう!