7948人が本棚に入れています
本棚に追加
補足だけれど、あの日結菜と別れてすぐに彼女から謝罪のメールが届いた。
夏樹の気持ちも考えずにカッとなってごめん。僕も力になるから、いつでも連絡をくれ。
確かこんな内容だった気がする。
謝らないといけない立場の俺としては、そういった気遣いをさせてしまって申し訳なく思ったけれど、それでも少しだけ救われた気がした。
何の解決にも至らないけれど、少なくとも結菜には許してもらえたことは俺を前向きにさせた。
まだ足掻ける。そんな気持ちにさせてくれた。
とはいえ、それはあくまでも気持ちの話であって。
具体的な行動は何一つ起こせていない。
ここ数日間、樹里と言葉を交わすことはおろか顔すらまともに合わせていなかった。
努力しようとしても、いざ樹里を視界に入れると怖くて一歩が踏み出せないでいた。
そのせいで、クラスの雰囲気も何となく悪い。
どこがどう悪いかは指摘できないけれど、どうもギクシャクしている。
多分、俺と樹里のせいだ。
今日こそは何とかしないといけないな……。
俺はいまいち自信を持てない決意を胸に、教室のドアをくぐり、自分の座席についた。
斜め後ろを振り向く。
クラスメイトたちが和気藹々と戯れる中に紛れるように、ポツンと寂しそうに樹里の机がたたずむ。
彼女はまだ来ていないようだ。
最初のコメントを投稿しよう!