『思い』と『想い』の狭間で

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 俺には沙耶の真意が読めない。  屋上って。飛び降り自殺に見せかけた他殺パターンとか、体育倉庫より現実味が増して嫌だ。  しかし、沙耶は鍵を取り出す気配がないので、どうやらこの屋上前の密室空間で俺をどうにかしたいらしい。  さて、と。  腹をくくろう俺。 「よし。沙耶、話ってなんだ?」 「そんな大したことじゃないわ。少なくとも、夏樹の名前が全国放送されるような展開じゃないから。安心して」 「そんな展開をおまえが思いついてる時点で安心できねえよ……」  いつものようには盛り上がらない。  沙耶もそんな気分じゃないことぐらい見ればわかる。  言ってみれば、今のやりとりは大事な話をする前のほんの気の紛らわしだ。  和みかけた空気を引き締めるように、俺は真面目な表情を作る。  目の前の沙耶は、わずかだけどなぜか苦笑している。 「夏樹は覚えてる? 球技大会の前日に、あたしが言ったこと」 「また唐突だな。まあ、覚えてるけど。悩みがある、とか。確かそんなことだったよな」 「うん。意外とバカなのに、こういうことはちゃんと覚えてるんだね」 「うっせえ」  沙耶が笑う。  でも、その顔からは依然として追いつめられたような、疲れの色が感じられ。  それが俺に不安を与える。
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