『思い』と『想い』の狭間で

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 黙る俺を楽しむように、愛斗はさらにらしくない言葉を重ねる。 「そりゃあ確かに沙耶を泣かせやがって、みたいな気持ちがないわけじゃないけどさ。俺は夏樹、おまえのこともやっぱ好きなんだよ。だからそんな親友には、後悔のない選択をしてもらいたいわけ。きっと、それが樹里ちゃんのためになるしな」  軽い口調の中に、愛斗の思いやりがいっぱい詰まっている。  頼りない背中を後押しされ、俺は嬉しくて仕方なかった。感情が高ぶり、呼吸が熱くなる。 「……バカ野郎。普通にカッコいい事言ってんじゃねえよ。おまえがイケメン力全開したら、俺の存在が霞むだろうが」 「あっ、悪い悪い。最近変態性ばっか強調されすぎて、イケメンの側面がすっかり失せてたからな。ファンサービスってやつだ」 「いるといいな、ファン……」  やっぱり愛斗だった。  安心とともに、俺は頬がにやけるのを感じた。  それを見て愛斗は俺に背を向け、俺が来た階段を上がっていく。 「おい、どこ行くんだよ」 「どこって決まってるだろ。巨乳美女のところだよ。多分今頃泣いてるから、俺の胸で慰めてやらないと」 「……シリアスな空気は守れよ」 「あいあいさー」  軽い返事を返し、愛斗は意気揚々と階段を駆け上っていく。  大丈夫かよおい…………。
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