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とはいうものの、実のところ、あまり心配なんてしていない。
だって愛斗だからな。
なんだかんだいって、俺もあいつのことを信用している。
今さら恥ずかしくて口にはできないけれど、親友っていうやつだ。
だから俺は余計なことに気を遣わずに、自分のすべきことだけを考えようと思う。
自分のために。
そして、傷つけた樹里のために。
学校を出ると、太陽をすでに大分傾いていた。
柔らかいオレンジ色の中、俺は家に向けてゆっくりと歩を進める。
胸に手を当てて、なんとなくだけれど自分の気持ちに整理をつける。
傷つかないための自分勝手を捨て、胸に宿る小さな明かりを抱きしめる。
それは本当に小さくて、勇気とすら呼べない欠片だ。
でもその小さな明かりには、俺を支えてくれる人たちの思いがたくさん詰まっている。
そして、その小さな明かりは、俺に勇気を与えるきっかけをくれた。
「…………頑張るしかないか」
とはいえ。
不安が完全になくなったわけじゃない。
拒否されることを考えると、怯えで足がすくむ。
でも俺は歩き出した。
小さくとも、着実に前へと歩き出した。
いつまでも一緒にいたい。
そう初めて思えた彼女のために。
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