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姉の行動習性に呆れる弟はため息を一つ落とし、ベッドに横たわってまた思案顔に戻る。
ていうか俺だけど。
ベッドに顔を埋めると、下からシャワーの音が聞こえる。
やけに卑猥だ。ホテルで彼女のシャワー待ちってこんなに生々しいのかなあ。
なーんてな。
無理やり頬を上げてみるが、大して気分が乗ってこない。
むしろ自分でやってて悲しくなってきた。
「はぁ……何も思いつかねえよ……」
気分転換に見事失敗し、俺は顔を埋めたままくぐもった声で呻く。
気持ちを伝えられないことが、こんなに苦しいなんて知らなかった。
いくら思いを募らせたところで、樹里には何一つだって届かない。
俺たちは途切れたままだ。
再び出口の見当たらない思考に没頭する。
いつの間にかシャワーの音はしなくなっていた。
と、思った次の瞬間。
部屋のドアが大きな音と共に開け放たれる。
俺は体を起こし、なぜか反射的に臨戦態勢をとる。
「夏樹ー、お姉ちゃんタイムだよー」
「綾香、てめえノックしてから開けろ! つーか服を着ろーっ!」
またしてもバスタオル姿の綾香だった。
胸が今にも零れ落ちそうだ。
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