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なんだかドッと疲れが出てきた。
げんなりしてベッドに寄りかかると、綾香は意味深な笑みを浮かべドアを閉めた。
ちょっと待て。
「なぜドアを閉める」
「なぜって、たまには姉弟水入らずで話したかったから。ダメ?」
「ダメじゃないけど…………俺に手出すなよ」
「それはあたしの台詞。まぁ善処するよ」
「約束はしてくれないんだ……」
不安だ……。
乗り気じゃない俺をよそに、綾香は当然のように俺の隣に腰掛ける。
ギシッと軋むベッドがやけにエロイ。肩がくっついてるよ。
「……綾香、近い」
「ん~? 何? 発情しちゃった?」
「…………」
ノーコメント。
煮るなり焼くなり好きにしてくれ。
うふふっ、と綾香の体が上機嫌に揺れる。
話したいと言っていたにも関わらず、何も言ってくる気配がない。
俺は隣に座る美女が実姉という喜びづらい状況で、ただ俯く。
鼻をくすぐるシャンプーの匂いは甘く魅力的なのに、心臓は変わらず一定のリズムを刻む。
不安だけを抱いていた胸が、安らぎで満ちていく。
さっきまで騒がしかった部屋は落ち着きを取り戻し、時計の針だけが微かに耳に届く。
とても居心地の良い時間だった。
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