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「そんなの気にすんなよ。俺なら帰っても暇してるだけだし」
これ本当。悲しいけれど。
それでも橘は俯き加減で立ち尽くし、なにやら難しい顔をしている。
もう一押しか?
そう思ったが、それはいらない心配だった。
「じゃあ……お願いしてもいい……?」
あくまで遠慮をきかせ、橘は切なそうな瞳を向けてくる。
俺と沙耶は思わず顔を合わせ、一緒に微笑む。
「おぅ、任せとけ」
「適当に待ってるからさ、戻ってきたら一緒にご飯食べよっ」
「……うん!」
ようやく笑ってくれた橘。
困った顔も悪くないけれど、やっぱり笑顔が一番似合ってる。
そこにいたのは、ただの天使だった。
……もう大分毒されてるよ俺。
こうして俺は奇跡的な一歩を踏み出すことに成功したわけだが、橘が職員室に行った後はマジでひどかった。
愛斗を始め男子連中に嫉妬の的とされるわ、女子にモテすぎだとよく分からない不満をぶつけられるわ。
しかも少し離れたところでは女子が俺をチラチラ見ながら内緒話をしていて、心がかなりダメージを負った。
その間、沙耶は俺をシカトして、ちゃっかり女子の輪に混ざっていた。
あいつは困った友達を笑うのが好きらしい。
人間不信になりそうだ。
だけど──
そんな中においても、俺は嬉しさでニヤケるのを止められなかった。
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