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クラスメイトによる集団ボッコ (通称いじめ) をなんとかくぐり抜けた俺は、地下にある食堂で沙耶と他愛のない話をしながら橘を待っていた。
人の危機だというのに助けようとはせずほくそ笑んで見ていた沙耶はもちろん一切反省しておらず、最初の方こそシカトしてやったが、数分も経たないうちに俺が折れた。
まあ、なんだ。
橘を誘うときも乗ってくれたし、あれくらいでへそを曲げるほど今の俺の機嫌は悪くないのだ。
ということで、待つこと一時間。
橘は栗色の髪を揺らしながら走ってきた。
風呂上がりでもないのに、その頬はほんのり桜色に染まっていた。
「ご、ごめんっ。 待った?」
「大丈夫。時間通りだよ」
「そ、そっか。良かった……」
ま、眩しい。
安心して綻ぶその顔は、天使だと言われても信じられるくらい無邪気で可愛い。
今年の高校生活どんだけウハウハなんだよ。
俺、幸せだな……。
しばらく見とれていたが、いきなり横っ腹をどつかれた。
肺にたまった空気が一気に排出される。呼吸が止まった。
「ぐえっ」
「何、その締まりのない顔。気持ち悪い」
「ぐっ、なんだよ沙耶。俺がいつそんな顔したよ」
抗議したが、沙耶も譲る気配はなかった。
「今よ今。樹里のこと、ジロジロ眺めて」
「そんなことねえよ。それに沙耶には関係ないだろ」
「何その言い方!?」
机に手を思いきりついて沙耶が立ち上がる。
なんでこいつはここまで怒ってるんだよ。わけが分からない。
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