デートのはずが……

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「ただいま……」 「お帰りーっ」  もはや習慣となった帰宅の儀式も行い、俺は一階リビングを目指した。  結論。  考えてもよく分からん。  沙耶がああ言ってるんだし、そのままの意味なんだろう。  面倒くさいことを放棄するように、リビングのドアを勢いよく開け放った。  最初に目に飛び込んできたのは、約半日ぶり会うであろう女の姿だった。  だが次の瞬間、俺は叫んでいた。 「綾香っ! お、おまえなんつーっ!」 「あ、夜帰りの思春期狼だ。お帰りーっ」 「誰が狼だ、って違う! その格好はなんだっ!」  思わずノリツッコミを繰り広げてしまったが、伝えたいのはそこじゃない。  綾香の教師らしからぬ格好についてだ。  綾香は不思議そうにしているが、俺からしたらバスタオル一枚で恥じらいを覚えないことが不思議で仕方がない。  生まれつき姉弟という設定、というか実際そうなんだけれど、視覚情報が妖艶すぎてそんな垣根なんて飛び越えてしまいそうだ。  あえて現状を分析しよう。  ペットボトルを片手に、濡れた髪を背中に垂らした綾香。頬がかすかに上気していて、風呂上がりなのが分かる。  そして首より下。  小さめのバスタオルが女性の大事な部分を隠しているとはいえ、強調された胸の谷間と滑らかすぎる太ももの破壊力は逆に増してしまっている。  脳裏に直視=下半身の暴走の危険サインが浮上する。
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