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「なによ、お風呂上がりにバスタオル一枚でいちゃいけない法律でもあるっていうの?」
「いや、そんな法律ないけど……」
前傾姿勢で寄ってくる綾香から目をそらす。
今にもたわわな胸がこぼれそうで心臓に悪い。
「でしょ。だからあたしにはバスタオル一枚で家中をうろつける権利があるのよ」
そんな権利を保障するほど憲法も暇じゃねえ。
ていうか、保障されたところでその権利を行使するのなんておまえくらいだ。
綾香は足を肩幅に開き、腰に手を当てペットボトルの水を豪快に流し込む。
あっという間に飲みほし、ぷはぁーと定番の気持ちよさそうな一言。
その間、俺棒立ち。
ここ、俺んちだよな?
「で、」
なにがで、なのかは知らないが、綾香は何かを企むようにソファーで足を組んだ状態でそう切り出した。
どうでもいいけど、太ももより上が見えちゃうぞ。
「あんたはこんな時間までなにしてたの?」
「なにって、転校生にこの辺の案内してたんだよ」
「あら、あんたもう手出したの? 本当に狼だったのね。お姉ちゃんびっくりー」
「なんだ最後の棒読み。違えよ。愛斗と沙耶も一緒にだ」
「知ってるわよ。あんたの奥手ぶりはあたしが一番よく理解してるし」
これはこれで傷つくなー。
苦笑いの俺に、綾香は本当に愉快そうに笑う。
もう好きにしてくれ。
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