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綾香はひとしきり笑った後、目尻の涙を指で拭った。
ていうか笑いすぎだ。
「でもさ、わざわざ案内してあげるくらいなんだから、それだけいい子だったんだ」
「……まあな」
「そっかそっか、それは何より。仲良くしてあげなよ?」
からかったかと思えば、今度は姉としての一面。
こういう使い分けができるから、俺は綾香にあまり反発できないんだ。
だけど、このまま頷くのもなんか癪だ。
ささやかな反発、とまでもいかないけれど、俺は頷かず、綾香をビシッと指さした。
「ふんっ。さっさと服着ねえと、次は襲うからな!」
言ってるそばから恥ずかしくなり、綾香のリアクションを見ずに俺はリビングを飛び出した。
そのままの勢いで二階の自分の部屋に駆け込み、迷わずベッドにダイブした。
かあああぁぁぁぁぁ!
やってしまった後悔でベッドの上を転がり回る。
ささやかな反発のつもりが、あっさりと自滅してしまった。
もう帰宅前に遡りたい。
あんなことしかできないから、いつまで経っても綾香に手のかかる弟扱いされるんだ。
はぁ…………。
綾香相手だと、どうも調子狂うな……。
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