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ヤティ・マティックSMGの残弾を確認して弾倉を再度押し込み、乾き始めた鮮血がこべりつく柳葉刀を握り直してバーナードはドアの外に神経を集中させた。
…近くに人の気配はない。隣りでゲイルの静かな吐息だけを感じた。
「どうよ、誰かいるか?」
「いないな。だがまだ厳戒態勢には変わりないだろう。一般人の避難をして各所の確認(クリアリング)をしているところかも知れん。」
握るジェリコ945のスライドを引いて薬室に装填された金色の胴体を視認し、ゲイルも気を引き締めた様だった。
「クリアリングか…陽動は?」
「期待できんな。向こうも仕事中らしい。」
「きっついなあ。俺達でどうにかするっきゃないのかよ。」
フッ、と鼻で笑ってゲイルの肩を叩く。
「どれだけ危険な状況(シチュエーション)も切り開いてきた。今回も、ここを出る頃には高笑いしているだろう。」
「そうありたいモンだな。相棒。」
相棒のこんなぼやきを久しく聞いてなかった気がしたのは、あながち気のせいではないかも知れなかった。何せ常に行動を共にし、それこそ同じ釜の飯を食った仲でもあるのだ。
願わくば、この先銃口を向け合うことにならなければいいが━━━━ぼんやり考えていたバーナードは、そんな相棒に一言投げかける。
「それでも電力供給とセキュリティーシステムの遮断は間もなくだ。あと1分ほどか。暗闇が味方になってくれるだけマシと言えよう。」
「とは言ってもなあ…どこから出るんだ?」
「どこも封鎖されてるだろうから、どこから出ても大差あるまい。撹乱しながら━━━━」
フッ━━━━世界が急に色彩を失い、漆黒に飲まれるとバーナードは扉をゆっくり開けて部屋から抜け出た。
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