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「い、いい、依頼だと?知るか…俺はな、なに、何も知らねえ!」
「そんなに水浴びしてたいならお望み通りにしてやるよ。何ならシャンプーも持ってきてやろうか?」
ゲイルが楽しげに話しかけていると、バーナードの上着に入っていた携帯電話が震えだした。
番号で、それが部下からだと理解して通話ボタンを押す。
「私だ。どうした?」
(バーナードさん、指示通りに古塚さんを尾行していたんですけど…今さっき日本行きの飛行機に乗っていかれました。)
逃げられたのか…バーナードは舌打ちした。
「ボスに報告は?」
(まだです。ですが、古塚さんは日本支部の友人と会合があると日出さんに告げてニューヨークを発ったそうです。)
「怪しいところだな。古塚は真相がバレる前に逃げた…と見るのが自然かも知れない。」
(━━━━ってことは、捕まえた奴から何か聞き出せたんですか!?)
バーナードは溜め息混じりの声で返した。
「いや、まだ情報は何も…ボスからは私が報告しておく。お前はもう帰って休め。」
(はい、わかりました。失礼します。)
「おお、おい!ふる、古塚が逃げたって!?」
あれだけ反抗的だった男が一転して、従順な態度でバーナードとゲイルを見上げている。
「あれ?古塚って名前知ってるのかな?」
「しし、知ってる!話す!だからひ、引き上げてくれ!」
「仕方ないなあ。バーナード、ちょこっと上げてやって?」
そこは人任せか…バーナードは思いながらロープを握り、小刻みに震える男を水から引き上げた。
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