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剛の忠義が疑わしい…そんなセリフが、奴の部下から聞かれるとは思いもしなかった。
恭一が知る限り、剛は理由もなく組織に刃を向ける様な奴ではないし、何らかの理由があったとしてもみだりに組織の統率や忠義を乱すはずがない。
それにこの男━━━━仁は元々、何かあるたびに剛に反発していた奴だ。こいつの言うことを頭から鵜呑みにするのは良くないだろう。
恭一は疑問をぶつける。
「俺の兄弟分をそこまで疑うからには、それ相応の理由があんだよな?何が気に食わねえってんだ?」
待ってましたと言わんばかりに、仁は返した。
「単純な事ですよ。我がニューヨーク支部の勢力拡大を、何故かボスは拒むのです。それがどういう結果を招くのかも考えずに、です。」
「具体的に言え。」
「そうですね…先日『アークファミリー』とコロンビアの奴等が衝突したのはご存知でしょうが、私はその際、コロンビアの奴等と手を組んで『アークファミリー』を叩くようボスに提案しました━━━━しかしボスはそれを全面的に却下したのです。」
「それがどうした?」
即座に返したが、仁の勢いは衰えそうにない。
「コロンビアの連中をダミーにして『アークファミリー』の勢力を削ることができれば、我が組織はどれほどの利益を得たでしょうか。」
「『アークファミリー』を相手にするなら全てを失うつもりでなきゃならん。リスクに見合うものが得られるかどうか━━━━」
━━━━音もなく全照明が落ち、店内にいた客やホステスのざわめきが恭一の神経を鋭くさせた。
すぐに殺気立った部下達に指示を出す。
「慌てるな!?明かりを確保して、女と客はその場から動かすな!」
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