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すると誰かが外へと通じるドアを開き、外部の明かりは入口付近を中心に店内の全貌を僅かだが浮き彫りにさせた。
…おかしい。外の照明が生きてるのに、何故店内の電源は落ちている?
「何だテメエ!?」
部下の声がしたかと思うと、言葉を形作っていた声は呻き声へと崩れた。
「ボォォォス━━━━!」
途端に恭一の背中に嫌な気配が走り、彼の手は反射的に腰のホルスターに伸びていた。
「何事だ!?」
「ダメです伏せて下さい!」
バンバンッ━━━━瞬く閃光が浮き彫りにした明暗の中、部下が数人倒れた。
「無闇に発砲するな!明かりを!早く!」
「ダメですボス!古塚さんもこちらへ!」
部下の1人が恭一と仁を通路へと誘導し、非常階段のドアを開け放った。
「ここで食い止めろ!俺はボス達をお送りする!」
「わかったからさっさと行け!早く!」
銃声と悲鳴で渦巻くフロアを背中にしながら3人は階段を駆け下り、部下は銃を手にしたまま車の方へと━━━━
ガシャンッ━━━━恭一と仁の頭上から割れたガラスが降り注ぎ、それらと共に黒い影も地面に着地した。
それが人だと認識するより先に、その存在に違和感があった。
こいつ…一体何階から飛び降りてきたんだ?
女のような小柄な体で、少なくとも2階より上から落ちてきたのは間違いない。
それに、手にしているのはマチェット━━━━部下はすぐさま奴に銃を向けて発砲したが、奴は銃弾に触れるより早く部下に接近してマチェットを振りかざした。
ザクッとマチェットの刃が部下の肩口に食い込んだかと思うと、銃を保持していた右腕はあっさり落ちて鮮血が吹き出る。
「くそっ!」
マチェットが部下の首も落とし━━━━仁はベルトから拳銃(SIGP230)を抜いてがむしゃらに撃ちまくった。
だが奴はその場から跳ぶとビルの壁面までも蹴って足がかりにし、マチェットを仁の首に走らせて着地した。
ゴンッ…仁の一部が路地裏に落ち、頭部を失った体はふやけたみたいに崩れる。
小柄な影は振り返り、マチェットを一振りして返り血を振り落とした。
性別もわからぬ得体の知れない存在がゆっくりと顔を持ち上げ、薄暗くて見えないはずの瞳が恭一を睨み付けた気がした。
「な、何だ…貴様…。」
「貴様…?オ前━━━━死ヌ。」
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