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「ああ、具合悪。何かもう一生分乗った気がする…二度と飛行機なんか乗りたくねえや。」
腕は立つが軽口ばかり叩くゲイルの口から、まさかそんな弱音が聞けるとは思いもしなかった。
十数時間もエコノミークラスに押し込められたら文句の一つも言いたくはなるだろうが、それにしてもゲイルが飛行機嫌いだとは初耳だ。
「つまりは日本に残るって事か?羨ましい限りだな。」
「何も飛行機で帰る必要もないだろ。俺としては船で帰るのも選択肢に入ってんだけど?」
「それこそ何日かかるかわからん。勘弁してくれ。」
バーナードは返しつつ、窓の外を見た。
ニューヨークのJFK空港からトーキョーのナリタという空港まで来て、今はホッカイドウという広大な島の上。
この新千歳空港は、見たところ完成して間もない感じだ。どこもかしこも綺麗で艶やか。おまけに変な臭いもしない。
アジアというと一種、独特な臭いなどがするといったイメージを勝手に抱いてただけに、近代的で尚且つ清潔な建物にバーナードは驚きさえしていた。
「やっと来たか。これを待つのが面倒なんだよなあ。」
ゲイルが文句を突きつけたのは到着ロビー内に設置された、預けた手荷物が流れてくるベルトコンベアだ。
「じゃあお前は手ぶらで行けよ。荷物はホームレスにでもくれてやるとしよう。」
「やめてくれ。俺の勝負パンツは誰にもやらん。」
バーナードとゲイルはそれぞれボストンバッグを手にとると、到着ロビーを出て辺りを見渡した。
年寄りだらけの団体や息子らしい若者を見つけて嬉しそうに手を振る老人などが殆どだったが、そんな中からバーナードは読み取った。
…迎えは来ているようだ。
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