Prologue~序章

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「ハイトマンさんとフォクセットさんですか?」 人混みの中から2人の前に姿を現したそいつは、バーナードが目を付けていた通り『迎え』らしい。 「鬼津さんの遣いか?」 「さすが、日本語は堪能のようですね━━━━外に車を用意致しております。お話はそれからで。」 異議を唱える理由もなく、バーナードとゲイルは頷くと彼について歩き始めた。 * 彼の私物ではないだろう黒塗りのセダンは、バーナードが乗り込んだ右側寄りに傾いたまま走り始めた。 「狭くてすいません。ハイトマンさんが大柄な方だと存じ上げてなかったもので…。」 「気にするな。それと私のことは『バーナード』でいい━━━━それで、古塚は今どこに?」 訪ねると、運転中の彼は慎重に口を開く。 「非常に申し上げ難いのですが…古塚さんはお亡くなりになられました。」 予想だにしていなかった返答にバーナードが一瞬戸惑うと、その間にゲイルが入った。 「He is dead!? Give me a break,ass hole.(『お亡くなりになられました』!?冗談キツいぜクソったれ。)」 いつもなら『いちいち騒ぐな』と一喝入れるところだが、今回ばかりはゲイルに賛同したくなった。 これは想定していたあらゆる状況に似ても似つかぬ、全く予想だにしなかったシチュエーションだ。 「私達は、ニューヨーク支部のナンバー2である補佐の古塚を処理にきたのだ。それがもう死んでるとはどういうことだ?」 「…仮にも客人として来日していた古塚さんをお守りできなかった不甲斐なさ、情けない限りだとは重々存じております━━━━古塚さんの件をお話しする前に、こいつについて話してもよろしいですか?」 バックミラーでバーナードを視認した彼はその手に持っていた写真を差し出し、バーナードも手を差し伸べた。 写真は全体的に真っ暗で、しかしぼんやりといくつかの人影が見える。荒い画像はまるで監視カメラの画像を拡大したもののようで、だが不鮮明な中でも横に並んだ二つの赤い点は異様だった。
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