Prologue~序章

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「これじゃあ何が何なのかわからんな。」 「数ヶ月前から釧路市を中心に拠点が襲われてまして、その写真は襲撃犯を写した唯一の写真なんです。」 「これがか?どこに写ってるんだ。」 「二つの点が写ってませんか?それが襲撃犯の目なんです。」 赤く光る二つの目…こんな目は見たことがない。 夜行性の生物独特のこの目が、人間のものだとは到底思えない。 「光の反射とかじゃないんだよな?」 ゲイルが問いかけた。 「無論、違います。奴は配電盤を破壊して明かりを消し、暗闇の中を襲撃してきたのです。どの照明も消えており、この瞬間は誰も発砲していない事も確認済みです。」 もしこれが人間ならば不思議な話だが━━━━バーナードはゲイルの言葉に更に被せた。 「これは人間なんだな?」 「奴の発したと思われる言葉を聞いた者も多々おります。間違いなく人間です。」 言葉を話す化け物…人の形を模した異形なる者…もしそんなものがいるとするなら、動物管理局も驚きを隠せないだろう。 如何せん、とんでもないものがいるのは確かなようだ。 「察するに、こいつが古塚を殺したんだな?」 「そうです。鋭利な刃物で━━━━マチェットで一刀両断…まともじゃありませんでしたよ。小柄で機敏なくせに力も強くて、銃で狙うのも大変でした。当たったはずなのに止まりませんし…。」 バーナードの手元から写真を奪い、ゲイルはふうん、と頷いて呟く。 「防弾ベストでも着てるのさ。」 途端に、運転していた鬼津の部下が反論した。 「それがそうでもないんです。現場には奴のものらしい血痕が多数ありまして、無傷ではないらしいのです。」 「他の現場でも血痕はあったか?」 「はい。奴が無傷で現場を離れた事はないと推測できます。しかし奴は傷を負いながらも人間とは思えないほどに俊敏な動きで…。」
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