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バーナードを後部座席に乗せたランドクルーザーは、やがてフロートシティへと続く一本道へと進入した。片側二車線ながら他の道路より広めの作りは大型トラックなどの出入りを意識してなのだろう。世界との交易の場としては当然の流れとも言える。
「この先、入場ゲートで身元照会がありますが…バーナードさんは正規の入国審査を受けているので問題ないでしょう。」
「ここに出入りする者は皆、身元の照会を?」
「ええ、何せフロートシティは世界中から様々な人間が来る場所ですからね。広さも釧路の3分の1はあるでしょうし、色んな場所にセキュリティーゲートがあります。警備も厳重で港湾警察も頻繁に立ち寄ります。」
━━━━つまり立ち回り方を間違えたら終わり。
それを理解し、道路の先で煌びやかに光るフロートシティを見ながら訊いた。
「あれは24時間出入りできるのか?」
「勿論。24時間、色んな国の船が出入りしますからね。中の施設も半分くらいは24時間営業してます。」
「ご苦労様といいたいところだな…奴等のオフィスを叩いてからが勝負だ。」
バーナードは頭に叩き込んだフロートシティの内部を思い出す。
標的であるロシアンマフィアお抱えの企業のオフィスはフロートシティの西端、4階にある。まずは『天照』が懇意にしている中国企業が用意した倉庫に行き、銃や目出し帽を装備して一気にロシア企業のオフィスを襲撃。使えそうな情報を拾って脱出する━━━━その中国企業が用意する倉庫は4階にあり、そこからロシア企業のオフィスまでは関係者用連絡路を使えば防犯カメラのリスクを低くできる。
勿論、それだけではない。あの船団の頭脳であるソフィアにフロートシティの警備部にハッキングをかけてもらい、セキュリティーシステムの機能停止などバックアップを依頼している。態勢は万全だ。
「でも、本当にお一人で大丈夫ですか?」
「私一人では無理だと?」
バックミラーでバーナードの顔を見ながら、運転手は首を振る。
「とんでもない、バーナードさんならできると信じてます…でも陽動もなしに突っ込むなんて無謀じゃないですかね?」
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