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RRR…━━━━テーブルの上で携帯電話が鳴り、ソフィアが手に取る。
「ミスターバーナード?」
(ああ、今フロートシティに入った。突入前にもう一度連絡する。)
「わかったわ。フロートシティの警備部のセキュリティーシステムは1分あれば潜り込めるから、フロートシティ内の電力が落ちたら行って。」
(恩に着る。)
電話を切ると、ソフィアはパソコンに向き直って準備を整える。
黙々とモニターを睨むソフィアを見て、百合江がニヤつく。
「なんか、アタシがいなくても副業だけで食べていけそうね。」
「そりゃ勿論、立派に大人ですから。ついでに言うなら私の特技はキーボードをたたくことで、人間を叩くことではないわ。むしろこっちが本業。」
「そうよね、失礼しました━━━━ってかそのまま港湾事務所を介してロシア人達のサーバーに侵入できないの?」
苦笑いを返すソフィアは言った。
「見慣れない暗号化技術のせいよ…それに港の記録や積み荷の中身などナド、詳細は今でも書類で提出したりしてる。ハッキングしてもリスクのわりに得られるものは微々たるものかも。」
「だから彼はわざわざ?」
「それと見せしめの為だって。怖いねえ、組織の人は。」
口より滑らかに素早く動く指先がキーボードを叩き、あっという間にバーナードの支援態勢を整えた…防犯カメラの録画データを削除し、電力供給の一部をシャットダウンして警備部の動きを妨害する。
フロートシティの中には『天照』と関わりのある中国人達もいるのだ。失敗はしないだろう。
ふと、百合江が口を開く。
「あ、そういえば信太来た?」
「来てないわよ。デートの約束?」
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