Passing~すれ違い

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* 「どうです、旦那。なかなか良いエモノでしょう?」 中国人から差し出されたサブマシンガン(ヤティ・マティックSMG)の状態は確かに良い。そんなに新しい銃ではないにも関わらずサビや部品の摩耗も少なく、がたつきもない。トリガー(引き金)を中ほどまで引くと単発、思い切り引くと連射という構造は正直馴染まないが仕事に影響が出るほどではないだろう。 「予備の弾薬もございます。念の為これも…。」 予備弾倉と一緒に出したのはマチェット…に見えたが、俗に呼ばれる柳葉刀。 「何故刃物を?」 「刀を使われるとうかがっておりました故、ご用意させていただきました。」 見慣れぬ緩やかな曲線の輪郭は愛刀より不気味で、だが刃の輝き、重みも厚みも標的を両断するには十分すぎるものだ。 ヒュンッ━━━━空を切ってバランスを手に馴染ませ、柳葉刀を仕舞うとバーナードはヤティ・マティックSMGや予備弾倉も装備して目出し帽を被る。 「十分だ。有り難く使わせてもらおう━━━━これから一騒ぎする。今日は早々に店を閉めてここから立ち去ると良い。」 「そうさせていただきます。ご武運を。」 合掌してから一礼した中国人は足早に去り、バーナードは携帯電話をソフィアに繋ぐ。 ━━━━(ミスターバーナード?) 「そうだ。準備は整った。」 (わかったわ。じゃあ1分後に電力をダウンさせるから。) 「頼む。」 携帯電話をしまうと改めて柳葉刀とヤティ・マティックSMGの感触を確かめ、バーナードは一切の雑念を払った。 情報では向こうの連中は武装していない様だが、油断はできない。わずかな油断と判断ミスは失敗に直結する。 頭に叩き込んだフロートシティの地図を組み上げてルートを構築し━━━━それが終わると同時に時は来た。
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