Prologue~序章

19/57

42人が本棚に入れています
本棚に追加
/273ページ
* カーテンの隙間から漏れる朝日に目を細め、バーナードは体を起こして時刻を確認した。 ベッドの横にある時計は朝の7時半を少し過ぎたあたり。ゲイルと共に札幌市内をまわるのは9時頃の予定だから、まだまだ余裕がある。 傍らに隠しておいた拳銃(トーラス レイジングブル)のグリップは"アトラス"のそれと違って違和感を与えてくるが、撃つだけならばさほど問題はない。しかし"アトラス"と違って口径が大きいだけあって、回転式弾倉に装填できる弾数は5発….44マグナム弾を6発装填できるシリンダーに慣れた目に、それは不思議に映った。 レイジングブルとバスタオルだけを手に狭いユニットバスに入り、それらを便器のふたの上に置いてシャワーを浴び始めた。 ━━━━ふと、昨日の写真が頭をよぎる。 赤い目…ネコ科の動物の様に暗闇で光るあの目を持つ人間…人間の瞳では捉えられない光をつかみ、狩りをする━━━━考えただけで手が震えた。 否、恐怖からくるものではない。指先の神経が好奇心で刺激され、麻痺したみたいになっているのだった。 今まであらゆる者と銃口を向け合い、そして死体を積み上げてきた…だがそのどれもがバーナードの興味を惹くに値する者ではなかった。 しかし今、目の前に得体の知れないモノが立ちはだかろうとしていて、それがバーナードにとっては何故か嬉々としたものに感じられてならない。 キュッ━━━━シャワーのバルブを締めてバスタオルで体を拭い、レイジングブルを手にバスルームを出ると窓際に立った。 窓からは札幌駅を含め、建ち並ぶビルや日本語の看板が多数見受けられる。 『ここ数年、札幌は北日本を代表する広大な地方都市として発展しましたからね。人口も爆発的に増えましたし、東京にも劣ってませんよ。』 …昨夜聞いた鬼津の部下の言葉がなくとも、それはこの眺望を見れば察しがついただろう。 地方から流入した人々を飲み込んだこの街のどこかに奴がいる━━━━まずは背後関係を調べなければならないだろう。 あの赤い目の奴が何故、執拗に『天照日本連合会』に刃向かうのか…何者だとしても、単独で情報もなしにというのはかなり無理がある。 となると、何らかの形で奴を支援している人物が、あるいは組織があるはずなのだ。 水面下で『天照日本連合会』の壊滅を狙う組織が動いているなら尻尾はつかめるだろう。 市内観光の後はゴミ掃除か…バーナードはフッと鼻で笑った
/273ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加