Passing~すれ違い

45/61
42人が本棚に入れています
本棚に追加
/273ページ
━━━━照明が落ち、それまで見えていた綺麗な白の壁面や扉は消え、代わりに漆黒と非常口の緑色をしたランプだけが見えた。 ざわめきが遠くから届く━━━━バーナードは走った。 関係者用のあまり広くない連絡路を人影や荷物を突き飛ばしながら突進していく自らの様を考えると少し笑えたが、バーナードは分岐もない道を駆け抜けて一般向けフロア…ショッピングモールを眼下に置くオフィスフロアに出た。 左折してすぐの角、僅かに非常灯が点いたオフィスのドアを足蹴にして思い切り開かせる。 飛び交っていたロシア語など気にもせず、バーナードは柳葉刀を引き抜くと気配のする方へと振り払った。 刀身から手応えが伝わり、呻き声が薄暗い中で滲んで消える━━━━。 そいつを蹴り跳ばし、どこからか懐中電灯を向けてきた奴にも一閃を見舞うと今度は近くで炎が瞬いた。 バーナードの横を抜けていった銃弾━━━━どうやら向こうは正確に照準を合わせられないらしい。 上着の内側に潜ませていたヤティ・マティックSMGを抜き出すと横一線になぎ払い、ばらまかれた銃弾のいくつかが標的に当たったのが奴等の声でわかった。 床に転がる懐中電灯を踏み砕き、朧気ながら輪郭を浮かべるパソコンを見つけると地面に叩きつけてハードディスクに狙いを絞る。 遮蔽物であるデスクの陰に巨体を置いてヤティ・マティックSMGを乱射していると、やがてバーナードの太い指先がターゲットを掴んだ。 あとはこいつらの出入国管理の━━━━考えていた矢先、突如暗闇が引き裂かれてオフィス内の惨状が目の前に広がったのだった。 考えるより先にオフィス内の標的にヤティ・マティックSMGを掃射し、ハードディスクを上着のポケットに突っ込むとオフィスから転がり出た。 「動くな!銃を捨てて両手を頭の後ろにつけろ!」 オフィスから通路に出て顔を持ち上げたバーナードから数メートル先、フロートシティの警備部の連中であろう奴等が拳銃(グロック19)を向けていた。 バーナードが走り出すと銃声が鉛弾を引き連れてバーナードの背後を通過していき、牽制すべくヤティ・マティックSMGの腹の中に収められていた銃弾を全て奴等に見舞う。
/273ページ

最初のコメントを投稿しよう!