Passing~すれ違い

46/61
42人が本棚に入れています
本棚に追加
/273ページ
「こちら警備部!銃撃事件発生!応援を要請する!」 無線機に怒鳴りつける声が聞こえたということは仕留め損ねた証拠━━━━だが今は早くここを出るのが最優先だった。 ヤティ・マティックSMGの弾倉を交換しながらエスカレーターを駆け下りると警備部の連中が集まりつつあるのが目に付いた。それこそ下の階から、或いは上の階からも続々と銃を手にした奴等がバーナードを探して集まってきていた。 「いたぞ!撃てぇ!」 エスカレーターを一気に駆け下りるバーナードの周囲でガラスは割れ、火花が散って空気を裂く音がいくつも鳴る。 2階まで来ると、1階からエスカレーターを上がって来るセキュリティーが見え━━━━バーナードはヤティ・マティックSMGを掃射してからエスカレーターを離れた。 吹き抜けの構造とガラスを多用したデザインは遮蔽物も少なく、身を隠すことなどできそうにない。 飛び散るガラスの破片を浴びながら走り、奴等の視界から消えようとバーナードは関係者用通路のドアを破って狭い通路を進んだ。 ババババババッ━━━━ヤティ・マティックSMGの銃口は蛍光灯を捉え、狭い通路に暗闇という要素を加えながらバーナードは退路を練った。 釧路刑務所の時の様に飛び降りて泳ぐのは無理だ。周囲には港があり、追っ手はすぐ迫ってくる。運良く海に入ったとしても港湾警察が来るだろう。死は免れない。陸路はと言えば専用道路が一本…セキュリティーゲートは封鎖されているだろう。叔父貴の部下と合流したとしても難しい。 「こっちだ!照明をやられた!気をつけろ!」 バーナードに迫る気配と懐中電灯の光りに色濃くなる危機感を背後に背負い、だがバーナードは冷静だった。 暗闇の中で通路に積み上げられた段ボールを片っ端から引き倒し、脇にあった消火器を投げ飛ばすとヤティ・マティックSMGの弾丸を受けて炸裂させた。 これで少しは足止めできれば━━━━退路を探そうと再び走り出したバーナードは、間もなく目の前に現れた人影にヤティ・マティックSMGを差し向けた。 ━━━━「貴様…ゲイル!?」 バーナードの眼光に口を向けるのは、見慣れたベビーイーグル…ジェリコ945の銃口。 ゲイルの苦笑は、微かな照明が作る明暗ではっきりとわかった。 「バーナード?何でここに━━━━」 現れたゲイルの質問を遮るように近くの部屋のドアを破るとゲイルを押し込んで自分も中へと入った。
/273ページ

最初のコメントを投稿しよう!