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「バーナード、まずはどこに行くんだ?」
「港も陸路も塞がれているならば、どこかを突破するしかない。幸いにもセキュリティーシステムの一部は死んでいるから、身元がバレない様にさえすれば問題ない。」
狭く暗い通路の曲がり角に背中を貼り付けて様子を窺うバーナードに、ゲイルは返す。
「バレないように、ね。ってかお前は正規ルートで入ったんだろ?一般人に混じって出たらよかったじゃん。」
「もう一般人の退去は終わっているだろう。それに港湾警察はK9(警察犬部隊)も持っている。臭いと硝煙反応は誤魔化しようがない。」
━━━━そう。もはや平穏無事にとはいくまい。
鼻腔に出入りする硝煙の臭いと耳にこびりついた銃声の残響が、その証。
「あの運び屋の支援が期待できないのならば、何か囮を噛ませねば…何か使えそうなものは見たか?」
「囮は作るしかないぜ?ほらよ。」
ゲイルが床から引っ張り上げたのは、バーナードが撃ち抜いた消火器の残骸だった。
程良く重量がある金属素材は衝突した際に大きな音を発し、尚且つ手近にあって投げるにも申し分ない。
「なるほど、良い選択だ。」
「当たり前。相棒をバカにしちゃいけねえよ。」
暗闇に順応し始めた眼と感覚を頼りに、音もなく通路を抜けると突き当たりのドアの前に立つ。
このドアを抜ければ、またあの吹き抜けのモールに出る。近くに警備員の気配はないが、ドアの小窓から覗くと懐中電灯の明かりがあちらこちらで走っているのが確認できる。
一番近くの出口から港に出て船を調達━━━━それから旧市街地区に逃げ込んで誤魔化す。陸路で出るとすれば銃撃戦もセキュリティゲートも避けられない。無論、港も警備が堅くなってはいるだろうが、移動距離や逃走経路などを考えるとそれが今現在、もっともマトモな手段だった。
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