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電光掲示板や様々なネオンが日の光に晒されて、静かな昼間の繁華街に彩りを添えている。路上には煙草の吸い殻や、中には酔っ払いが撒き散らしたのであろう吐瀉物なんかもある。
「昨日は祝日だったから、いつもより活気があったのさ。」
「あ、俺ここ知ってるぜ?すすきのだろ?ホテルのガイドブックに載ってた。」
同乗していた恭一に軽々しく訊ねたゲイルを、バーナードは咎めた。
「ゲイル、叔父貴に対してその言葉使いは━━━━」
「なあに、良いんだよ。お前等は剛の側近なんだろ。息子みたいなモンだ。」
「そう言って下さると有り難いです。」
「そう堅くなんな。堅えとせっかくの飯も不味くなるだろ。」
「恐れ入ります…これからどこへ案内して下さるのです?」
車が止まり、数名の部下が辺りを警戒しながらドアを開けた。
「言ったろ?飯だよ。お前等に本場の日本食ってのを食わせてやろうと思ってな。朝から酒ってのは何だから酒はねえけどよ。ニューヨークじゃあ日本食はあんま食わねえだろ?」
部下が経営している日本料理店によく行きます…それは言うべきではないな━━━━バーナードは口に含んだ言葉をそのまま飲み込むと、恭一の背中を追ってビルに入っていった。
ビルに入ってすぐ、のれんをくぐると恭一が言った。
「どうだ?いいだろ?俺の舎弟だった奴の店だ。今はカタギになったがな。」
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