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「あれだよな。バーナード?」
「そうだ。間違いない。」
札幌の中央区からだいぶ離れたここ…2人の前方数十メートル先にある店舗は、元々『パチンコ』というギャンブルの店だったそうだ。広大な駐車場に大きな店舗は当時の栄華を象徴するものであろうが、真っ暗でボロボロなそれは『栄華』を語るには説得力が足りなかった。
「外から見たらただの廃墟だな、こりゃ。」
「だが中にいる。気配が伝わってくる。」
「そうだな…確かにいるな。叔父貴の言う通り、ガキだ。」
『ガキ共がギャング気取りで、色んな薬を駄菓子みたいに売ってやがるんだが…お前等にはそいつらにお仕置きしてもらいてえんだ。裏に何がいるのかも調べてくれりゃありがてえ。』
わざわざ恭一がお願いしてくるものだからどんな強者がいるのかと期待すらしていたバーナードだったが…中にある気配に、物珍しさはない。
「雑魚揃いだな…試し切りには十分か。」
「早速使うのかい。勿体無い気もするけどねぇ。」
ゲイルが視線を向けてくる中、バーナードは恭一から貰い受けた白鞘拵えの太刀を確認した。
鞘や柄は木製で、普段ニューヨークで使っている脇差とは長さも重さも違い、鍔がないのも見慣れない。しかし刀自体は綺麗なもので、刀身には刃こぼれも錆も皆無━━━━手入れが行き届いているのが一目瞭然だった。
「どうよ、それ。」
「最高だ。いつもの脇差より長いが、むしろ丁度良い。」
「やだねえ、そんなんで切られたらさ。いっそのこと頭ぶち抜いてもらった方が楽かも。」
「この重さと刃なら、痛みはさほどじゃない。痛みを感じさせないくらいに綺麗に切れる。」
「そいつぁ良かったな。電気椅子なんかよりはよっぽどマシだ。」
━━━━「あ?何だてめえ?見かけねえ顔だな。」
反射的に銃に手をかけたが、そのセリフはバーナード達に向けられたものではなかった。
例の建物の目の前、1人の男が数人に囲まれている。誰がどう見ても恐喝だとわかるその光景…しかし男が殴られ━━━━状況は一変した。
それまで優位だったはずの数人が男に掴まれると鮮やかに投げ飛ばされ、男は銃を抜いて1人ずつ鉛弾を見舞ったのだった。
「クソッ、ナメやがって!」
寸でのところで難を逃れた連中の1人が捨て台詞を吐いて建物に入り、男はそれを追い掛ける。
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