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「あいつ、俺達を━━━━」
「しかしあの写真の男じゃない。確かに妙な怒気と気配はするが、目は普通だ。」
「だよな。光ってないもんな。」
そう、写真で見た様な異様な目はしていない。
少年に向かって鋼の殺意をちらつかせるそいつはどう見ても普通の人間で、外見は━━━━瞬く蛍光灯に照らされるその容貌は、銃口を向けられている少年とさほど変わらないくらいの年齢に見てとれた。
「射撃も身のこなしも素人ではない…だがゲイル、若いな。」
「だな。民間警察ってのは思春期のガキができることじゃないはずだ。あんな童顔(ベビーフェイス)で30代だったら━━━━」
「ち、違う!俺達ゃ『天照』とは関係ねぇ!確かにヤクを回してもらってたけど、組織とは関係ねぇんだよ!」
怯える少年が口走ったセリフは嘘ではないだろう。
二人は再度、彼等のやり取りに耳を傾けた。
「じゃあ『天照』の奴らを知ってるんだな?」
「し、知ってるけどどこにいるかまでは知らねえよ!いつも向こうから連絡が来て商品を渡されるんだ!下っ端なんだよ!何にも知らねえ!」
バーナードは呟く。
「どうして叔父貴は少年達との関係を私に言わなかったんだ…。」
「知らせる必要もなかったんだろ。どのみち奴等は用済みさ。」
ゲイルに言われて納得し━━━━直後に破裂音が響き、額を撃ち抜かれた少年の亡骸は床に崩れた。
そして奴が銃を仕舞った時、バーナードはゲイルに目配せし、デザートイーグルを手に立ち上がった。
「動くな。」
二人に比べると華奢なその背中が回ると、外の街灯に照らされた奴のシルエットはゆっくりと両手を挙げて見せた。
「お前等、『天照』か?」
「言葉はわかるようだな…何者だ?」
「質問してんのはこっちだろ。お前等は『天照』か?」
そこへ、ジェリコを構えたゲイルが近付きながら割り込む。
「お前もわかんない奴だな。こっちが立場的に上だろ。」
「立場…そうかい?」
瞬間、奴がしゃがみ━━━━奴のシルエットに隠れていた街灯が、薄暗い空間に慣れてしまっていた2人の瞳を突き刺す。
「野郎!」
バーナードは気配と足音を辿って人差し指に力を込めたが、奴は脇を抜けて回り込み、ゲイルの腕を捻って彼を地面にねじ伏せた。
「これで対等だ…じき警察が来る。今日のところはこれで退散させてもらう。」
言うとゲイルを突き飛ばし、バーナードが追跡しようと駆け出した時には既に影すらなかった。
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