Prologue~序章

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* 「おう、昨日はご苦労。ガキ共の相手なんざつまらなかったろ?」 笑いながらソファーにどっかりと座った恭一は、缶コーヒーを開けるとそう言ったのだった。ゲイルは躊躇なく恭一の向かい側にあったソファーに腰を下ろしたが、バーナードは立ったまま返した。 「確かに少年達がいましたが、第三者の介入もありました。」 「『第三者』?誰だ?」 「わかりませんが、単独で少年達を皆殺しにした腕は素人とは思えません。」 ふぅん、と頷く恭一の態度は他人事の様だ。 「素人じゃないとしたら何だ。民間警察官か?」 「それにしては幼い風貌でした。それに、民間警察官が突然発砲したり射殺など━━━━」 「それはお前が知らないだけだ。民間警察官ってのは案外質悪いモンだぜ?いきなり撃ってくるし、もし殺しちまっても『仕方なかった』って言っちまえば許される事もよくあるみたいだぜ?」 さもそれが当たり前だと言いたげな恭一に、バーナードは納得するしかなかった。 ━━━━日本と言えば、かつては世界有数の治安の良さを誇った極東の島国…以前読んだどの書籍や資料にもそんな言葉が並び、ただしそのどれもが素晴らしい過去としてのみ記されていた。少子高齢化に伴う労働人口の減少に対して日本政府が打ち出した外国人労働者の受け入れ政策により、日本国内に大量の外国人が流入━━━━それと同時に凶悪犯罪が多発し、困り果てた日本政府は米国と共同で『民間警察制度』を作り上げた…。 大抵の資料にそういった書き方がなされているが、それではまるで日本人だけが優良人種だと書かれているようで不愉快に思ったのをバーナードは覚えていた。 通常の警察機関より小回りが利くという利点を持つが故、かなり自由な警察活動を行えるとは聞いていたが…これではバーナードの地元にもいる汚職警官と何ら変わらない。 形は違えど、自らの罪を隠していることに変わりはないのだ。 恭一は続ける。 「無茶苦茶な民間警察官なんざ珍しくねぇし、『幼い』って言うのはお前等の主観だろ?日本人ってのは欧米に比べりゃガキみたいなモンさ。」 そんな言われ方をされてしまうと、バーナードには返す言葉などなかった。 バーナード自身が日系組織の人間でありながら日本の現状を詳しく知らないのは事実で、目の前にいる彼はずっと日本にいる人間なのだ。言葉の信憑性は格段に違う。 一方で、ゲイルは反論した。
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