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(そいつぁめんど臭えこったな。古塚の次は得体の知れない野郎が相手とは。)
札幌駅構内に設置されている国際電話専用の公衆電話。その受話器の向こうから言葉を返してくる剛は至って他人事の様だった。
「そうは言いましても狙われてるのはこちら側で、しかも叔父貴にも危険が及ぶかも知れないのですよ?」
(四の五の言ったってここからじゃ何もできんしな。それにお前もゲイルもいる。心配無用だろ?)
「褒めていただけるのは嬉しいですが、私達は目立つから護衛にしないと恭一さんが仰ってました。」
バーナードのセリフに、剛は溜め息混じりに答えた。
(あいつは頑固だからな。言い出したら聞かない━━━━お前等には悪いんだが、もうしばらくそっちにいてくれ。何かあっても困る。)
「わかりました。」
返事してすぐに電話は切られ、バーナードは壁にもたれかかって煙草をくわえるゲイルを見た。
「何だって?」
「もうしばらくここにいるよう指示を受けた━━━━それより、ここは禁煙だぞ。」
公衆電話に肘を置き、ゲイル何度も頷いて言った。
「そんくらいわかってるって…で、ボスは叔父貴のガードを?」
「そうだ。古塚の件は片付いても、まだ他の奴が残ってるからな。」
「そりゃわかってんだけどねぇ。叔父貴は俺達にガードさせてくれないぜ?」
━━━━そう、問題はそこにある。
恭一にとって2人は部下でもあり客人でもあるのだ。いくら兄弟分の部下で腕が立つとはいえ、古塚というニューヨーク支部の問題を処理しに来ただけ。
日本支部の問題に2人を介入させ、棺に入れて帰国させる様な事が起きれば醜態以外の何物でもない━━━━恭一はそう考えているのだろう。
無論、バーナードが恭一の立場にいたとしてもそうするだろう。身内の問題を身内で処理できないのは恥じでしかない。
だが、バーナードもこのままでは引き下がれない。
「だがゲイル、古塚はボスと対立してはいたが同じ支部の者だ。それが殺されたのにこのまま帰れるわけもないだろう?」
「なるほど…あの猫目野郎を片付けるって名目でここに残るのか。」
それしか方法はなかった。
恭一のガードをしながら敵を仕留めるには、そう言って恭一に納得してもらう他ない。
「そんじゃ、とりあえず叔父貴んとこ行く?今ならラッシュあわにも遭わないから地下鉄も空いてるぜ?」
ゲイルは地下へと伸びる階段へとあごをしゃくった。
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