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止まったままのエスカレーターを駆け上がって空き店舗に入った直後、ゲイルが叫ぶ。
「さがれ!」
言われて動いたバーナードは銃を下ろすと、脇差を抜いてマチェットを受ける。
金属が擦れ合う音が吐息に混ざって聞こえてくる…バーナードより格段に小さい体躯ながら、刀身越しに伝わる奴の力はバーナードに勝るとも劣らない。
「ナカナカヤルナ…デカブツ。」
「冷静な感想だな━━━━ゲイル!」
バーナードが奴を打ち払うとゲイルのジェリコがすぐさま援護したが、しかしゲイルが引き金を引ききる前に奴は信じられない脚力で不規則に動く。
「ちょこまかと!」
頭に血が上るゲイルにバーナードは言う。
「焦るな!とにかく間合いを保て!気を抜いたら殺られるぞ!」
跳躍力に筋力、他の全ても常人のそれとは比にならない性能を見せつけてくる━━━━そんな事態はバーナードにとって初めてであり、そして防戦一方の今の状態も初めての事態だった。
一度気を抜けば、古塚の二の舞だ。
バンバンッ━━━━ジェリコは壁に埋め込まれた鏡を砕き、奴はそのままバーナードに向かってきた。
まずは横一文字の一閃が払われ、返ったマチェットの刀身は更に連撃を繋いでくる。
不規則な連撃も間合いの取り方も奇妙な奴の攻撃は、しかし反撃する隙がない。
バーナードは斜め下から迫る刀身をわざと脇差で受け止め、そのまま奴との間合いを零距離まで詰めて腕を掴んだ。
マチェットを握る腕を掴まれた奴はバーナードの背中に飛びついて足を首へと巻きつけてくる。
折られる━━━━バーナードは足が完全に巻き付く寸前、もう片方の腕を自身の首と奴の足の間に滑り込ませた。
かろうじで骨は問題ないが、だが頸動脈と気道はどんどんきつく締めあげられ━━━━バーナードは走り出して作業用の足場へと突進し、背中に貼り付くそいつを叩きつけて引き剥がした。
「ゲイル!」
待ってましたとばかりに間髪入れずに弾丸を見舞ったが、奴は疾走してガラスを破り、外に駐車されていたトラックの荷台に着地した。
その後ろ姿を追って銃口を眼下へ下ろした時には既に気配すらなく…近付くサイレンに気付いて銃と脇差を仕舞う。
「白昼堂々と来るとはな━━━━叔父貴にどう報告したものか…。」
「仕方ねえじゃん?とりあえずさっさと行こうぜ?ポリ共に捕まったらそれこそごまかせやしない。」
その意見に頷き、2人は非常階段の標識に向かって走り出した。
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