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札幌駅に近付くにつれて赤い回転灯が目につき、とうとう駅の姿が見えると同時に周囲の状況も見えてきた。
パトカーや武装した警官の群れが駅の周囲で警戒態勢を取りながら構内へと前進し、一方では救急車も待機しており、救急隊員が怪我人の手当てをしているらしかった。
その様子を見る限り、撃たれた気配はない。逃げるときに転んだかぶつけたかしたのだろう。膝を擦りむいた者や打撲したらしい個所をおさえる者ばかりだ。
「もっと駅に近寄れ。」
ハンドルを握る部下に言って車を駅へと近付けるが、交通整理中の警察官がその動きを察知し停止するように促してきた。
「楯突くなよ?」
「わかっております。」
頷いた部下は運転席のパワーウィンドウを開き、にこやかに対応する。
「お巡りさん、何かあったんですかい?」
「いや、大した事ないんだ。どっかのバカが場所も考えずに喧嘩したらしくてね。」
「『どっかのバカの喧嘩』にしちゃあ大層な騒ぎですな。」
「予想以上に騒ぎが大きくなったから、収拾にあたる警官を増やしただけさ━━━━ここから先は進めないから、迂回するかUターンしてくれ。」
ただの喧嘩…まだ詳細を公開しないのか、あるいはただ単に誰も知らないだけなのか━━━━展開している警官は武装こそしているが、だがどれも普通の制服組だ。
「どう思う?」
「警察ですか?組織犯罪対策課は動いていない様ですね…私達との繋がりはバレてないでしょう。」
「やはりそう思うか。俺もそう思う。だが警察がバーナードをマークし始めたら厄介だな。」
「一番厄介なのは民警(民間警察)でしょう?」
確かにそうだ…金で動く反乱分子をご丁寧に抱えたまま団体行動をする警察機関なんかより、行動を読みにくい民間警察の方が質が悪い。
周りをちょろちょろする民間警察は少しでも小金を稼ごうと必死な奴等だ。いつどこで情報を仕入れて噛みついてくるかわかったものではない。
「民警の動きには気を配る様に指示を━━━━」
思考を遮ったのは、胸元で震え始めた携帯電話だ。
恭一はすぐに手にとる。
「バーナードか!?」
(申し訳ありません。突然襲われたもので騒ぎが大きくなってしまいました。)
「今話せるのか?」
(はい。工事中の地下の連絡通路を抜けて地下街に向かってます。)
とりあえず一難去った事がわかると、恭一は改めてシートに深く体を預けた。
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