Prologue~序章

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「警察とはやり合ったのか?」 電話の向こう、呼吸を整えたバーナードは答えた。 (いえ、寸でのところで警察はかわしました。目撃はされてません。) 「そうか、それならちったぁ時間があるな…警察とやり合ってなくても監視カメラに記録が残ってるはずだ。大通り公園の地下駐車場に迎えをやるからそれに乗れ。後で合流場所のGPSデータも送らせる。」 (わかりました。そこで車に乗ります。では。) ブツッ、と回線が切れると、ハンドルを握る部下は訊いてきた。 「監視カメラの映像データ、どうにかできませんかね?」 「無理だろうな。今頃警察が回収して画像解析にまわしてるはずさ。どんな映像が撮られたのかはわからんが、容疑者だろうが重要参考人だろうがマズい事に変わりはねぇ。」 「では、2人を━━━━」 「早まんなよ。あいつらみたいに腕が立つ奴等をただ失うのは惜しい。」 …とは言うものの、彼等の使い道がだいぶ狭まってしまったのは間違いない。 様々な国の人間がいるこの日本だ。バーナードほどの巨漢は見かけるが、それは国民の中の一部でしかない。加えて監視カメラの映像もある…身元がわれなくても、顔などの身体的特徴が明るみになるだろう。 万が一その映像などが報道されたら━━━━それこそ日本にいられない。 「一先ず姿を隠させる。それから今後の対応とやらを考える。」 「それで足りると良いですね。」 「今すぐ日本から出そうとして向こうの警戒網にひっかかったりしたら尚悪いだろ。今は姿を隠して向こうの動きを見るのが一番さ。」 「わかりました。では2人は回収した後でどこかに軟禁しておくのが良いでしょう。また騒ぎを起こさないとも限りません。」 ━━━━一番腑に落ちないのはそこだった。剛が傍に置きたがるほどの男が、安易に銃を抜くだろうか。 彼は『突然襲われた』と言っていた…そもそも余所者のバーナードが誰に、なぜ突然襲われるのだろうか。彼ほどの腕ならばただのチンピラや通り魔相手に銃など不要なはずだ。 となると、相手はバーナードの正体を知る凄腕のヒットマンか…あるいは民間警察官だろう。 まさか古塚を殺った奴ではないとは思うが━━━━後で詳しく話せばわかるところだ。 とにかく警戒に越したことはない。 恭一は言った。 「札幌一帯に気を張る必要があるな。警察と他の組織の動きはよく見ておけ。」 「もちろんです。この街の均衡を乱されるのは嫌ですからね。」
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