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薄暗い工事中の通路を抜けてドアノブに手をかけると、バーナードはゆっくり回して引いた。
そのドアを境に工事中の区域を抜け、蛍光灯の明かりが規則的に並ぶ殺風景な駐車場にはまばらに車が停められている。
「どうだ?」
バーナードが訊くと、端末を持つゲイルは頷いた。
「ここだな、間違いない。もうじきお迎えが来るはずさ。」
「目印は?」
「『見たらわかる』だってさ。『白黒の小さい車』だって書いてあるけど━━━━バーナード!」
ゲイルが唐突にバーナードの上着を引っ張った。
すぐに手近に停車されたRV車の陰に隠れると、そこでようやくバーナードは理解した。
無機質なコンクリート剥き出しの駐車場をゆっくりと移動する乗用車…その白と黒のカラーリングに赤い回転灯というスタイルのおかげで、それが警察だと理解するのは早かった。
「捜索範囲を抜けてなかったか…マズいな。」
舌打ちするゲイルの肩を叩き、バーナードは立ち上がる。
「違うな…見ろ。」
バーナードの勘は当たったらしく、パトカーは駐車場の片隅に停まり、中から警察官とは明らかに違うとわかる男が降りてきた。
「叔父貴も趣味悪いぜ。あんなの迎えに寄越すなんてよ。」
「だが四方を囲まれたこの状況を切り抜けるには最適だ━━━━行くぞ。」
近付くと男は2人を見つけて一礼し、パトカーの後部座席のドアを開けて出迎えた。
「助かるぜ。上はどんな感じだ?」
「よろしくないですね。相当数の警官が駆り出されてますし、みんな武装してます。ここで見つかればかなり危険です。パトカーに乗ってどこまで誤魔化せるか…。」
「なるようにしかならねえさ。小さくてもパトカーはパトカーなんだ。どうにかなるだろうよ。」
ゲイルがジェリコを用意しながらシートを前にずらし、そこへ体を折り畳みながら乗り込んできたバーナードも銃を確認し始めた。
「いざとなればやるしかあるまい。無論、叔父貴には迷惑をかけない様に気をつける。」
「ま、こんな状況になった時点で迷惑は迷惑なんだけどな。」
2人を信用しているのか無関心なのか、男は話の流れなど関係無しに言った。
「これからお2人には少しの間だけ身を隠していただきます。ニューヨーク支部長はお2人にこちらでお仕事をして頂くつもりだった様ですが…。」
「なあに、こいつなら何とかしてみせるって。なあ?」
言われたバーナードは、自身の口の端を持ち上げて笑うしかなかった。
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