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ロビーやレセプション、通路を見ればそのホテルの全体的な雰囲気はだいたいわかるものだ。
ただ、この部屋は━━━━普段ならこんな所には泊まらないだろうと断言できる、そんな一室にバーナードとゲイルは案内された。
「わお、叔父貴ってば良い趣味してる。」
そう言ったのは、勿論ゲイルだ。
ベッドのカバーやカーテンなど部屋の所々に淡いピンク色があしらわれ、男と女の情事を支えるだけにしてもかなり大きいベッド━━━━つまりはモーテルだ。
しかし日本のモーテルは妙に小綺麗で、設備もサウナや広いバスルームやらなにやら…何でもある。
「ここはうちの持ちモンでな。堂々とした建物で、尚かつ内部が人目に付きにくい構造になってんだから匿うには最高さ。」
…残念ながら理屈は通っている。
だが、こんな部屋を男2人の為に用意した恭一はニヤニヤしている。
「何だ、不満か?」
バーナードの顔色に気付いた恭一が肩を叩き、言った。
「贅沢は言いません。自分で招いた事態です。」
「不可抗力だったんだろう?避けらんねえ事だってある…だが本当に写真のあいつだったのか?」
改めて訊かれ、バーナードは頷く。
「確証はありませんが…写真の気配と同じ気配を感じました。」
「そうか。ゲイルはどうだ?何か感じたか?」
「叔父貴、俺はまともな人間なんです。しかもよくわからない写真と実物を比較なんてできないでしょう。普通。」
そりゃそうか、と納得した恭一は続けた。
「しっかし気にくわねえな。どうやって奴はお前等をマークしてやがったんだか。」
「私とゲイルが日本に来たことを知ってるのは?」
「札幌支部(うち)の連中くらいしか知らんだろ。剛だって内輪の問題を上の連中に知られたくねえはずだ。だろ?」
それはそうだ。家族の恥を身内中に知らせる必要はないし、知られれば組織全体の士気低下にも繋がりかねない。
「なら話は早いな。俺達の事が外に漏れたんだ。叔父貴の部下を経由してさ。」
その発言に、さすがの恭一も険しい顔にならざるをえなかった。
「てめえ…その言い分は何だ。うちの奴等が外の奴等にベラベラ喋ったって言いてえのか?」
「すいません、言い方が悪かった。でも叔父貴の部下に悪気がなくても、ちょっとした会話でそんな話が出る事だってあるかも知れないじゃないですか。」
「『悪気がなくても』?」
「知り合いに話す時とか、うっかりって事ですよ。」
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