Prologue~序章

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座り込んだ恭一が鼻で笑う。 「んなアホがいるか。ガキの集まりじゃねえんだぞ。」 「あくまで可能性ですってば。悪気の有無に限らず漏れるなんて珍しくない━━━━で、今はどっかと喧嘩してんですか?」 ゲイルの切り返しの意味を察するのは容易で、恭一は口を開いた。 「喧嘩相手がいれば楽なモンだ。いないからわかんねえのさ。」 「日本(クライムロード)なら抗争なんか毎日じゃないんで?」 「おいおい、バカ言ってんじゃねえよ。確かに前は外人達が日本に入ってきてゴタゴタしてたが、今は民間警察官(ハンター)のせいでみんな『仲良しこよし』さ。わざわざ目立って標的にされたかないんだよ。」 『クライムロード』…その言葉を生み出したのが何人だったのかは定かではない。 少子化に伴い減少した労働人口を補う為に日本政府が進めた外国人労働者の受け入れ緩和が、世界の東西を結ぶ『犯罪の道(クライムロード)』の成長促進剤になったのは間違いないだろう。外国人の受け入れで労働人口の確保は順調だったが、日本政府は知らず知らずの内に数多の厄災をも招き入れていた。 非正規ルートで高い金を積んで日本に連れてこられた不法入国者に、日本では絶滅したはずの病━━━━そして犯罪組織。 これらが災いしてか治安は急激に悪化。それに対処する為に日本政府が米国と推し進めたのが『民間警察制度』…『ハンター』と呼ばれる民間の警察官が今では日本の治安改善に効果を発揮している━━━━というのはよく聞く話であり、大抵の人なら知っている近代史でもある。 「ワルはみんな同盟を組んで邪魔な奴に闇懸賞金を懸けて逆に狩るんだ。そこまで形ができてるのに、わざわざ得体の知れん奴を俺達にぶつける意味がわからん。」 どうやら本当に思い当たらないらしく、恭一は何度も首を傾げたのだった。 そこで、バーナードは訊いた。 「では、今私達が消えて得をするのは誰でしょうね?」 ふと、恭一は顔を上げる。 「『天照』が潰れたら、その分だけ縄張りを広げれる…ワルはみんな得するさ。損するのは俺達を狩り損ねた民警だけだ。」 …敵の正体や意図を断定するには、情報があまりにも少ない。 バーナードは言った。 「情報を集めましょう。奴が単独でなければ、どこかの組織にも何らかの動きがあるかも知れません。」 「よし、何かわかるまでお前等はここにいろ。いいな?」 言われ、2人は頷いた。
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