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せめて部屋を別々にしてくれたら良かったのだが…バーナードなどそっちのけで、ゲイルは電話で呼んだ娼婦を相手に大暴れしている。
それが異常だとは思わない。何せゲイルも健康的な1人の男で、性欲を溜め込むオスなのだ━━━━だがしかし、親友の目の前でああも激しく情事に興じるのはどうなのだろうか。
湧き上がる欲望を糧にひたすら腰を振る親友と、快感に顔を歪める娼婦…顔見知りの情事は見てて退屈だ。
こんなモーテルではやることも限られてしまう。つまらないテレビをただ眺めるのも飽き飽きし、借り受けた銃と刀の手入れもとっくに終わっている。
しかし彼の様に娼婦を呼んで楽しむ気分でもないし、下手に外にも出られない━━━━余談ではあるが、今彼の相手をしている娼婦は組織が資金源の一つにしている売春宿から来た。ここに誰がいるかなど、全て口止めされている安全な女だそうだ。
バーナードが持て余した時間の使い道を考えている間に果てたのだろう。ゲイルは女から離れるとこちらを見た。
「何かあれだな、今更になって一気に疲れが出てきたぜ。」
「あんだけ動けば疲れもするだろ。」
「なんだよその言い方。そんなに俺が羨ましい?」ソファーに寝転んでいたバーナードは体を起こす。
「お前と一緒にするな。」
「じゃあ何が不満なんだ?どうせやることないんだから、女とやっても問題ないだろ。」
実際そうなのだ…彼のセリフは正論だ。
だが仕事も何もできずに叔父貴に迷惑をかけてばかりのこの状況に、バーナードは苛立ちすら覚えていた。
「わかっている━━━━だがこうダラダラしているのも落ち着かん。」
「クソ真面目だもんな。言いたい事はわかってんよ。でも時が来ればやることも見つかる。」
根拠もないのに素晴らしく楽観的なのが不思議である。
だが、バーナードにはない良さの一つでもある。
「叔父貴達も色んな情報仕入れるだろうし、あんな変なのがいりゃあ別のとこからも何かわかるかも知んないじゃん?」
…あながち根拠がないわけでもない様だ。
不意に思い出し、バーナードは言う。
「そういえば、奴は釧路ってところの周辺によく現れたんだったな…釧路での事件、調べたら何か出てきそうじゃないか?」
「そいつぁ名案だ。ちょうどいいモンもある。ネットも使い放題だぜ。」
ゲイルが自身の後方、立てた親指を机の上にあるパソコンに向けたのだった。
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