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「鬼津さんよお…俺はあんたの味方だぜ?嘘なんかつきやしないさ。」
奴が着ている派手な柄物のシャツや蛇革の鞄にも好感はなかったが、しかしいつにも増してその服装が目障りに感じてならない。
身なりや態度こそ気に食わない奴ではあるのだが、情報屋としての信頼性が高いのは否定できない━━━━恭一は自分に言い聞かせ、テーブルを挟んで相対する男に返した。
「もし手前が仕事もロクにできないようなへたれ野郎なら、とっくの昔に死んでんだろうよ…にしても妙だと思わねえか?」
「妙なもんか。どこの連中だって会合くらいするでしょうよ。勘ぐり過ぎだ。」
情報屋が楽観視している一方で、恭一は目の前に並べられた資料が気にかかって仕方がなかった。
資料…と呼べるほど立派なものではないが、情報屋がまとめた書類はテーブルに置かれている。客もまばらなこじんまりとした喫茶店には不似合いなそれにかかれているのは、ロシア系組織の動向。
仮にもその資料が真実ならば、ロシア系組織の連中はかなりの頻度で会合をしている━━━━日付は釧路の部下達が襲われ始める少し前。
頻繁に行われた会合の面子がまた面白い。どうやら釧路の幹部と札幌の上級幹部が顔を合わせたらしいのだ。
今の釧路は確かに治安が悪い。数年前の大地震で市の半数近くが半水没状態となり、復興支援が遅れたどさくさに紛れて密入国やら人身売買やらが横行したいわく付きの街だ。人口も北海道の中では3本の指に入る。
しかし…いくらロシアンマフィアの奴等の重要拠点があるからとはいえ、札幌の上級幹部とあり合わせの幹部じゃあ格が違い過ぎる。
そんな奴等がわざわざ数百キロもの道のりを経て話し合いに来た、となれば何か余程の用件があったと見て間違いないはず。
恭一はコーヒーを一口飲み、言った。
「で、例のバケモンの情報はどうだった?」
「あんたを襲った奴かどうかわからんが、ここ最近"ファンピール"って得体の知れない野郎がちょろちょろしてるって話は聞いたぜ?ロシア人とつるんでるって噂もあるが、本当かどうかはわからんね。」
証拠はない…だが火のないところに煙は立たないとはよく言ったもの。
「その"ファンピール"っての、もうちょっと調べてくれや。」
情報屋は溜め息を吐く。
「ダンナ、リスクは低かないですぜ?」
「だから金を払ってんだろ。うまくやってくれりゃあこっちも金を弾める。」
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