Prologue~序章

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* 「バーナードさん、用意ができました。」 部下が言ったので、バーナード・ハイトマンは返した。 「警戒線は?」 「周囲2ブロックはクリアです。」 「車は?」 「勿論。絶対に大丈夫です。」 ニヤリと笑って親指を立てて見せた部下の言葉に疑念はない。 しかし、バーナードは部下の肩を叩いた。 「『絶対』などという言葉は存在しない━━━━注意は怠るな。」 「は、はい、わかりました。」 部下が車の方に戻り、踵を返してバーナードは店の中へと戻っていった。 琴の音色をスピーカーを通して流れる店内、この日本料理店はボスのお気に入りの店でもある。 「失礼します。」 バーナードは廊下に跪いてから言い、障子を開いて顔を上げた。 「ボス、車の用意ができました。」 「そうか。それじゃあ行こうか。文也はバーナードに案内してもらいな。」 ボス━━━━日出 剛は膝に手をつきながら立ち上がると背筋を伸ばし、その向かえに座っていた半村 文也も帰り支度を始めた。 「どうよ、この店。料理もなかなかだろ?」 「ロスにも日本料理店はあるが、こっちは最高だな。」 「だろ?ちゃんと日本で修行した板前が作ってるんだぜ?」 饒舌な2人は、共に酒を酌み交わした直後だけに頬を赤らめて上機嫌だ。 その剛の耳に、バーナードは耳打ちする。 「ボス、不用意な行動は避けてください。」 「何だ、何をそんなに警戒してんだ?」 「朝にも申し上げた通り、『古塚派』の計画が実行されるかも知れません。いつも以上にお気をつけ下さらないと。」 剛は笑って言い返した。 「『古塚派』は組織拡大を無理やり推し進める強硬派だが、まさか俺を殺すなんて真似はしねえだろ。そこまで警戒する必要はねえ。」 「不穏な動きがあるのです。ゲイルからの報告もありますので━━━━」 「お前等を信用してる。大丈夫さ。いつも通り頼む。」 剛はにこやかに答えて店を出て、空を仰ぐと黒い4WD(リンカーン・アビエイター)に乗り込んだ。 それに続いていた文也が、唐突に振り返って渋い顔をした。 「『不穏な動き』って言葉は気になるな。何の話だ?」 彼が目を細めるのも無理はない。危険な匂いに敏感な人間なら誰もが訊く事だ。
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