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一般のウェブサイト…言われてみれば、それも有効な手段かも知れない。
だが問題がある。ネットに精通している人間がいないことだ。2人ともパソコンがまったく使えないわけではないのだが、しかしここは日本だ。どんな情報がどこにあるのかわからない暗礁の領域で無駄にもがいても意味を成さない。
今の2人には、もがく気力もないのだ。
「あ、車だ。こんな時間からモーテルに来るたぁロクな奴じゃねえな。」
窓の外を見ながらゲイルが言ったのだった。
「車?」
「ああ、ほら。乗ってるのは若い奴だな。」
確かに、運転しているのは若い男だ。
ここからでは後部座席は見えないが、助手席には誰もいない。
「1人でご来店かね。あれ。」
「わからんが、お前の言うとおり『ロクな奴』じゃないな。」
「この時間にモーテルに1人ってのはワケありだよなあ。1人でポルノを楽しむなら別だけど。」
━━━━このモーテルは1階に駐車場、2階に部屋がある造りになっており、各部屋と駐車場が区切られて隣接している。
その車はバーナード達がいる部屋の隣りの駐車場に入った。
「あら、お隣さんだぜ?」
「ワケありがお隣さんか。気が進まないな。」
「気にし過ぎさ。俺は逆に大歓迎。あいつが何しに来たか気になるじゃんよう。」
楽しげに壁に耳をあてたゲイルを、バーナードは止めなかった。不謹慎だと止めたところで色々言い訳するのは目に見えていたからだ。
「お、来た来た…何人かいるな。そういう趣味が━━━━」
上機嫌だったゲイルは急に黙り、途端に表情が引き締まった。
「バーナード!」
異常を察知したバーナードは訊いた。
「どうした?」
「隣りで女の子が襲われてる!」
言ったゲイルの目が動揺しているのはすぐわかった。
「ゲイル、落ち着け。今、俺達はここで大人しくしてなきゃならないんだ。わかるな?」
「けど隣りで女の子がヤられそうなんだぜ!?見過ごせねえよ!」
「だが見過ごすんだ。その子を助けてもは生き返らない。」
その発言が軽率だった、と思い知るのはすぐ後のこと。
完全にキレた彼はホルスターからジェリコを抜くとバーナードに押し付けた。
「いくらテメエでも、俺に命令なんかさせねえぞ…俺は行く。従業員通用口を使えば隣りに行けるはずだ。」
本気だと、わかった。
「好きにしろ。その代わりケツは持ってやらんぞ?」
「わかってんよ。」
ゲイルは従業員通用口のドアを蹴破って駆け出した。
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