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「サイコーだな。駅で拉致ったって?」
「あの事件のどさくさに紛れてさ。これならビデオとか撮って流したらけっこうイケるなって。」
「だから俺の可愛い一眼レフ用意しろって言ったんだな…まだ食べてないよな?」
「我慢して待ってたんだぜ?感謝してくれよ?」
…どうしたんだっけ。私。
駅で何かあって…逃げたら男に捕まったんだ━━━━。
深春はまだ重い頭を持ち上げ、目を開けた。
…3人の男がこちらに気付き、湿気を含んだ視線で見てきた。
「起きたね。大丈夫?」
「睡眠薬飲ませたんだろ?何が『大丈夫?』だよ。」
「だって暴れられて怪我でもされたら売値下がるじゃん。」
売値…深春は声を発しようとしたが、手足は縛られ、口にはタオルか何かが巻かれていた。
「これからね、みんなで楽しい撮影会をやろうって話になったんだ。いっぱい気持ち良くしてあげるね。」
━━━━言葉の意味をやっと理解した深春は、しかし体を動かそうとすらできなかった。
目の前の男達の欲望に淀んだ瞳。
深春に伸ばされる彼等の手。
今から起きる悪夢━━━━。
お兄ちゃん━━━━目を閉じた深春の衣服が破られるとほぼ同時、近くにあったドアが勢い良く開いた。
「その子から離れろ。早く!」
銀色の髪を持つ白人の彼が男達に向けるのは、鈍く光を返す拳銃。
しかし男達は、バレているのも知らずに動揺を必死に隠す。
「なな、何だよお前。民間警察か?」
「うるせえゲス野郎。5秒以内に消えろ。でなきゃてめえのナッツを吹き飛ばしてケツにも一発カマしてやる━━━━ひとつ!」
カウントダウンが始まったが、男達は逃げない。
「銃持ってるからってな、ナメんなよ。民間警察だって丸腰の━━━━」
「ふたつ!」
「何だよ!声でかくしたって━━━━」
「みっつ!」
ここにきてようやく男達の顔色が青くなり始め、やがて1人が両手を上げた。
「わわわ、悪かった!俺達の負けだ!ガキはやるよ!」
「あ!待ってくれよ!置いてくな!」
バタバタと走り去る3人を見送り、銀髪の白人は銃をしまうと深春に手を差し伸べたのだった。
「よく泣かなかったな。えらいぜ。」
あ━━━━気付くと、涙が流れていた。
「安心しろ。俺はあんなロリコン共とは違う。」
「ううん、違うんです。安心しちゃって…。」
「そうか…ちょっと待ってな。」
銀髪がポケットから折り畳み式ナイフを出すと、手足を縛るビニールテープを切った。
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