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「車内でご説明します。まずはお乗りください。」
促すと文也は後部座席に座り、バーナードは助手席に乗り込んで話し始めた。
「ニューヨーク支部の古塚 仁という男はご存知ですか?」
「勿論知っている。君んとこ
のナンバー2だろう?」
「そうです。古塚は常日頃、組織拡大を謳っては支部内で強硬派支持者を増やしてきました━━━━しかし、最近になってその動きが活発化してきたのです。」
まだ酔いがさめてはいないが、表情を引き締めた文也は顎に貼り付く無精髭を撫でて頷いた。
「なるほど、内紛か。」
「残念ですが、そう呼ぶのが相応しいかと。」
ここで、文也の視線は剛へと移る。
「ボスがしっかりまとめないからこうなるんじゃないか?あの会計士の件だって━━━━」
「ハイメルは元々組織の人間じゃなかった。俺に従わなくても当たり前だ。家族共々消した人間の話を蒸し返すのはやめてもらいてえな。」
「如何せん、お前の求心力不足は否めないな。せいぜい上の連中に見限られない様に━━━━」
不意にバーナードは前方、進行方向にいた人影を見て銃(M29カスタム"アトラス")に手を伸ばした。
Get down━━━━
その声に続いて窓から伸ばした"アトラス"が鳴き、前方にいた人影の腕が上を向いた。
刹那、人影が持っていたそれは放たれ、近くにあったボロアパートの壁が吹き飛んだのだった。
「グレネードランチャー!?」
「怯むな!走り続けるんだ!」
狼狽していた部下はバーナードの指示でアクセルを踏み込み、バーナード達の後ろを走っていた味方のセダンからは援護射撃が始まった。
「人気モンは辛えな畜生!」
「お前はボス達の護衛を!私は情報収集に行ってくる!」
バーナードが言うと運転していた部下は「はい!」と頷き、しかし剛はバーナードを止めた。
「情報収集だと!?」
「誰がこんな真似をしているのかはっきりさせるんです!許可を!」
剛はバーナードの背中を押した。
「行け!食い散らかして来い!」
「御意。」
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