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砂地に埋もれた、風化した建物の間を化け物が走る。
四本足の足の長いトカゲに似た魔物だ、それが何体いるかもわからない様な数で所狭しと走り回っていた。
空から見ればおびただしいアリの大群にも見える、だが、アリと称するには馬鹿げた大きさだし(犬よりは大きいだろう)、ガチガチと歯を噛み鳴らしながら走る様は、化け物以外の何でもない。
それを、建物の上から見下ろす者がいた。
「……数が多いわねぇん。」
「言うなよ、気が滅入るだろ?」
ぼやいたのは、藤色の髪を後ろで束ねた美しい女だった。
この小大陸ベリオルでも今や誰も着ない、伝統の着物は、相変わらず見事に着崩れ、艶着物と化している。
そしてそれにさらにぼやくのは、赤い髪をした青年だった。
「はあぁ、苦手なのよね、ああいうの。」
「仕方ないさ、全てはボーナスのため、っと。」
二人は互いに顔を見合せ、ふっ、と笑みを浮かべた。
そして、一度お互いに手を叩き合わせ、それが合図となる。
「行くぜ!」
青年、刹那と、女、ジュリアンは一気に建物から飛び降りた。
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