これがぼくらの始まりで

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 走り続けること十数分、全力疾走であった為、息は絶え絶えである。だがその代わりと言っては何だが、先程までの異様な集団の姿は無い。無事に逃げだすことに成功した様子。 「ここまで来れば大丈夫みたいね」  葉月の手を掴んでいる少女が呟く。そのことでようやく目の前の相手の姿へと意識を向ける葉月。  そこには類稀なる美しさを持つ一人の少女が。やや茶色味かがった髪を腰まで伸ばし、端正な顔立ちの少女。多少釣り目気味だが大きな瞳。もしその容姿を問えば、十人いればその十人が間違えなく美少女と答えるであろう。  葉月自身も一瞬見とれてしまう。しかしそれも一瞬だけ。直ぐさま違う感情が心を支配していく。歯はガチガチと小刻みに鳴り、額には大量の冷汗が。  目の前に居る美少女こそ、この学園で最も関わってはいけない危険人物。  生まれ持った美貌と全国模試トップクラスな学力、その他様々な才能を持ち合わす完璧さ。だがそれすらも霞んでしまう程の傍若無人なトラブルメーカー。現代に蘇った織田信長、はたまた始皇帝とも比喩される双葉学園の暴君。  その名は―― 「……たたた、滝川柚葉……さん」  
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